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インボイス制度 実務レベルでの負担増大はどれくらい?

 2023年はIT分野に関連する国主導の話が立て続いた年でもある。マイナンバーにおける不備はマスコミで大きな騒ぎとなったことでよく知られているが、会社経営にとっては、何よりもインボイス制度・電子帳簿法である。システム開発において、このインパクトは限りなく大きかったのだが、ただ肌感として担当者レベルに聞いても切迫感がないようにも感じる。中小企業の皆さんはどうされているのだろうか? TV・新聞の報道は一部の反対する人たちの声の報道のみで実務レベルでの大変さについては、まったくと言っていいほど報道されていない。実務として会計処理を自分で行っている身としては体感的な労力は1.5倍増しの負担感がある。


 負担増大ポイント

  •   請求書にインボイス番号が記載されているかどうかのチェック作業。レシートサイズの場合に老眼だとチェックがつらい
  •   会計システム登録時に適格請求書かどうかの登録作業、一括処理できたものがすべて一つづ登録作業
  •  下記は一時的ではあるものの導入時に混乱
  •   登録番号無い場合に、取引先への連絡。未対応業者というよりも請求書変更が遅れている。
  •   従業員への新しい制度の理解周知活動

小さな会社だと請求書の枚数は限られているのでそれでも対応は可能だが、請求書の枚数が多い会社の負担はどれくらいなのだろうか。
国が得られる税収よりも、各企業レベルで増えるコストの方が遥かに大きいというネットニュースもあったが、あながち間違ってはないのだろう。ここはTV・報道にこんなに会社のコストはアップしていると大いに伝えてもらいたい所である。

 一方でシステム開発会社としては、早い段階からリサーチをしていたので、これといった改修作業も発生せず、クライアント企業においては問題なく利用してもらえているようである(会計分野は対象外だからということもあるが)。販売管理側システムの対応としては、消費税の単位の丸めルールが1枚の請求書につき1回となったわけだが、世の中、そうなっていないシステムが相当に多くあると思われる。実際に私たちが過去に作ったシステムはインボイス制度の計算方法と合っていない。世の中の皆さんが対応できているのだろうか少々疑問ではある。実務上で大変なのは、自社発行のインボイス対応よりも、受領した請求書がインボイス対応になっているかどうかのチェックの方であろう。インボイス番号が正しいかどうかチェックするプロセスが必要と指針に記載があったが、受領する請求書が多い会社においては、システム的なサポートなしにこれを実施するのは至難の技である。それ以外にも請求書に対して差し引きされる支払い手数料にたいして、インボイスの発行が必要どうこうの議論が春先にあったと記憶しているが、直前になって対応方法が変わるという制度自体が迷走している感が拭えない。

 

 唯一インボイス制度で期待していたのが、手数料の差し引きが面倒になることで、手数料を差し引いて支払いを行うという日本の商習慣が見直さればと淡い期待もしていたのだが。Peppolなどインボイスと連動してデジタル化を進めようと国が旗を振っているようだが、そんなことよりも、この手の伝統的伝統的な非効率な日本の商習慣を国主導で廃止してくれれば、それだけで間違いなく中小企業の効率は向上するのだが。FAX、指定請求書、支払い手数料の責任問題、A4以外の紙媒体の廃止、手形取引、自社固有の商習慣の下請けへの押し付け、デジタル化云々の前に国主導で断捨離をしてもらいたい所である。

 

 来年から本格的な対応が要求される電子帳簿法のインパクトはインボイスよりも大きいと思うのだがどうなることやら。